さて、これまで「競売」に比べて「任意売却」が、いかにメリットが多いかという話を中心にコラムを進めてきましたが、裁判所までが出て来て、法律にのっとり粛々と進んで行く競売に比べて、任意売却は債務者であるあなたと、債権者である金融会社（あるいは保証会社）、そして買い手の三者の合意を元に進んでいきます。

逆に言えば、「複数の相手と多くの合意を取り付けなくてはスムーズには進まない」という意味で、その三者を仲介する者の経験によって大きく結果が変わってくるという側面もあります。

あなたが苦渋の選択として「任意売却をしよう」と決意しても、それが一定の期間内に売却できなければ、結局は競売への道が待っています。

そこで今回は、「あなたが任意売却を決意したにも関わらずなかなか家が売れない」場合について、少し考えてみましょう。

任意売却は、競売に比べて高値で売却できることが多いので、一般的には「債務者だけでなく、債権者にとってもメリットのある方法だ」と言われています。

住宅ローンを滞納している時点で、債権者は既に債務者の返済能力には確かな信頼がおけない訳ですから、なるべくこの売却により多くの金額を一括で返済しておくことは金融機関に安心感をもたらします。

しかし、だからと言って「必ず債権者が任意売却に賛成するか」と言われれば、そうとは言いきれません。

また、債権者が複数いる場合などは、一人でも債権者が合意してくれなければ、任意売却を行うことができません。では、どうして債権者が賛成しない場合があるのでしょうか？

先ほども申しましたが、当然のことながら債権者は人情で任意売却に合意するのではなく、メリットがあるから合意します。

例えば、せっかく買い手が見つかったとしても、その売却額が競売で見込める額よりも低いと考えれば、当然、合意をすることはないでしょう。

この場合、肝になってくるのは、どのようにして債権者にメリットを提示できるか、という交渉技術と、不動産会社などを通じて「いかに債権者が納得できる売却額を提示する買い手を連れて来られるか」です。

限られた期間の中で、債権者も債務者も買い手もメリットを享受できるマッチングを見つけ、それを粘り強くアピールしていく仲介者がいれば、任意売却は必ず大きな恵みをあなたにもたらすことになると考えられます。